―たしか10年ほど前のロッシ選手は、「ブレーキングさえよくしてくれれば、あとは自分が全部なんとかする」というコメントをしていたように思います。今の彼は、その当時よりもバイクのいい部分を引き出して走ろうという傾向に変わってきた、ということでしょうか?「そこにはふたつの理由があるのではないかと思います。ひとつは、今のブレーキング自体はそんなに悪くないとバレンティーノは言ってくれているのですが、それでもなぜ差があるのかというと、ブレーキングで大きく先行して入れば勝てるものの、今の勝負力ではブレーキングで並んでインを差し、加速で抜いていく勝負をできない。そこが足りていないのが、2019年のバイクの大きな反省点です。もうひとつ、タイヤの持たせかたも答えをまだ見いだせずに苦労をしているところで、マーヴェリックやファビオと同じように走ろうとしてもスピンがとまらない。その原因探しがいまだに道半ば、という状況です」―ブレーキングに関しては、クアルタラロ選手はブレーキが非常に強く、コーナー進入でもマルケス選手と互角の勝負をするシーンが何度も見受けられました。彼の乗り方は、ヤマハのなかでもやや特殊なのですか?「たしかに、ヤマハであの走りはちょっと独特かもしれません。ただ、ブレーキングのパターンは本当に人それぞれなんです。ファビオの場合はブレーキングの中盤がすごく強く、そこが見た目にも派手な部分なのでどうしても目立つのですが、じつはその後がすごく繊細で、ブレーキをかけたままの状態で倒していくところがすごく細やかで、そこが武器になっているのではないかと思います。あれを毎周やるのは辛い、とファビオも言っていましたけれども(笑)」