「ど、どうも。」 そう言ってテンパった顔で俺達の方に向かって口を開いてきたのは、先ほど階段から突然落ちてきたクラスメイトの田中くん。 「つ、続けて」 な、何を続けるんだ。 彼女とは別に何もしていない。 そしてするつもりもない。 というか......なんで階段から急に落ちてきた。 彼の周りには誰もいない......。 俺はともかく、なんで君も一人なんだ......? 他の班員はどうした? 「大丈夫か......?」 一応俺は心配の言葉を彼にかける。 「だ、ダイジョウブ、ダイジョウブ......続けて」 だ、だから何を続けるんだ。 しつこいぞ......。 「ま、間宮くんなんだよね。」 「あぁ......そうだけど。」 た、田中君にはわかるのか。 やっぱりこのままだとやばいな。 「とりあえず僕はもう行くから。ご、ごゆっくり。あと、誰にも言わないから安心して。」 は? そう言って全速力で彼は落ちてきた階段を駆け上がって行った。 なんだったんだ......。 「ま、間宮くん。見つかっちゃったね.......」 「あぁ.......まぁ」 また二人の間には沈黙が流れる 「そろそろ時間もやばそうだし、お互いの班に戻ろっか」 「あぁ......それがいいと思う。」 これ以上一緒にいて、もしも田中君のように俺が間宮健人だとわかる奴が現れたら、それこそ俺へのヘイトは本当にやばいものになってしまうだろう。 修学旅行どころではない。 それに彼女にも迷惑をかけることになるだろう。 まぁ俺は班には戻らないけれど。 「じゃ、じゃあね。間宮くん。す、すごく楽しかったよ。ほんとに。」 そう言って彼女も田中君が駆け上がっていった階段を静かに上っていった。 何故か頬をものすごく赤くして......。 はぁ.......。 彼女が見えなくなると.......俺の心臓の激しかった鼓動がようやく治まってくる。 そしてようやく大きな息を吐き出すことができた俺は........その場に腰が抜けるように座り込んだ。 頭がくらくらする......。も、もし田中君が落ちて来なかったら、どうなっていたのだろうか。 今思い出しても、心臓がおかしくなる。 ほんとに何だったんだ.......。 なんで彼女は俺何かと......。 楽しかった? 嘘をつくな。 俺と一緒にいて楽しいわけがないだろ......。 彼女は一体何なんだ? ほんとに悪魔なのだろうか........。 彼女の笑顔が俺の頭から離れてくれない。 ほんとに、ほんとに何なんだよ.....。 身体中が熱い......。 そしてしばらくそんな俺の脳は正常に働きそうにない......。