海外でプロプラノロール塩酸塩3.2gを服用した例が報告57)されている。患者は、 28歳の女性で、服用2時間後に病院に収容された。収容時、意識、見当識があり、 心拍数は60/分で、血圧は正常であった。催吐剤としてトコンシロップ30mlが投 与された。嘔吐直後より寒さを訴え、心拍数が40/分に低下、血圧は65/30mmHg - 18 - となった。アトロピン(1.0mg)の静脈内注射後、心拍数は80/分に増加し、血 圧は正常にもどった。胃洗浄後、回復した。血漿プロプラノロール濃度は9.53 μmol/Lであった(治療域、0.19μmol/Lから0.58μmol/L)。 この報告では著者は、β遮断剤の過量服用例において、催吐剤の使用が迷走神 経刺激と心血管の虚脱をもたらす可能性があり、催吐剤を使用する場合には、 先にアトロピンの投与を考慮すべきであると述べている。 同様に、迷走神経緊張を強める可能性があるので、胃洗浄の前にアトロピンを 投与すべきであるとしている。