【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、表面処理された充填剤、それを含む樹脂組成物とそのワニス、この樹脂組成物を用いた配線板、樹脂フィルム、半導体パッケージ、半導体パッケージ搭載配線板および配線板用材料、ならびにそれらの製造法に関する。【0002】【従来の技術】配線板への各種部品の高密度実装化の要請から配線板の多層化が進み、さらにその内層に回路要素(コイル:L、コンデンサ:C、抵抗:R)を形成した多層板の利用が高まっている。そこで、絶縁層を形成する樹脂層として、高速信号処理に係る回路部には低誘電率樹脂層が、コンデンサに対応する層には高誘電率樹脂層が用いられるなど、樹脂材料の機能化が検討されている。高誘電率樹脂層を形成するためには、高誘電率樹脂材料の選択の他、チタン酸バリウム等の高誘電率の無機充填剤を配合することが行われている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、そのような高誘電率充填剤を配合する場合、充填剤の分散性が悪く、樹脂ワニス中等で凝集してしまうことから、多量に配合させることができず、目的とする高誘電率を達成できないという問題があった。上記に鑑み、本発明は、分散性が良好な高誘電率充填剤とその製造法を提供することを目的とする。別の本発明は、分散性が良好な高誘電率充填剤が配合された樹脂組成物と樹脂ワニス、および、それらを利用した電子部品用材料とその製造法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る充填剤は、チタン酸バリウム粉体粒子の表面が一級アミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなるものである。このように、一級アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることにより、他のカップリング剤に比べ、カップリング剤によるチタン酸バリウム粉体粒子の表面被覆効果を向上させることができる。そして、このように粒子表面が被覆されていることにより、液状樹脂中または樹脂ワニス中で凝集しにくくなって、チタン酸バリウム粉体の分散性が向上する。【0005】別の本発明に係る充填剤は、チタン酸バリウム粉体粒子の表面が、有機酸の存在下、一級アミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなるものである。表面処理が有機酸の存在下で行われることにより、有機酸が反応触媒として作用するため、処理時間を短縮して効率よく分散性の高い充填剤を提供することができる。【0006】本発明に係る表面処理された充填剤の製造法は、一級アミノ基を有するシランカップリング剤を有機溶剤に分散または溶解させた処理液とチタン酸バリウム粉体とを接触させて表面処理を行うものである。このように、有機溶剤を用いた湿式法で行うことにより、効率よく表面処理効果が高い充填剤を得ることができる。さらに、この処理を反応触媒としての有機酸の存在下で行うことにより、処理時間を短縮して効率よく表面処理を行うことができると共に、有機酸は有機溶剤に溶解するので、表面処理後の触媒の除去が容易であるという利点がある。仮に触媒としての酸やアルカリが充填剤に残存してしまうと、これを用いて樹脂絶縁層等を形成した際に、絶縁性が悪くなってしまうからである。【0007】本発明に係る樹脂組成物は、樹脂と、上記の本発明に係る充填剤とを含むものである。そして、本発明に係る樹脂ワニスは、樹脂と、本発明に係る充填剤と、溶剤とを含むものである。このように、本発明の充填剤を用いることにより、本発明の樹脂組成物または樹脂ワニスには、この高誘電率充填剤を従来に比べて多量に配合することができる。そして、それらを用いて、充填剤が均一に分散され電気特性が均一化された樹脂層を形成することができ、また、所望の高誘電率を有する絶縁層の提供等が可能となる。【0008】本発明に係る樹脂フィルムは、上記の本発明に係る樹脂組成物からなるものである。したがって、任意の量の高誘電率充填剤が均一に分散され所望とする任意の誘電率を有するフィルムが得られ、各種電子部品用の絶縁フィルム、接着フィルム、または配線板用のプリプレグ等として好適に使用できる。【0009】本発明に係る配線板は、絶縁層と配線導体とを含み、その絶縁層が樹脂と、チタン酸バリウム粉体粒子の表面が一級アミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなる充填剤とを含む樹脂組成物からなるものである。すなわち、絶縁層が本発明の樹脂組成物から構成されているので、その組成を調整することにより、容易に、用途に応じた誘電率を有する絶縁層とすることができる。たとえばこの絶縁層をコンデンサに対応する樹脂層に用いることにより、安定した電源電圧の供給が可能な様々な容量のコンデンサを備えた、機能性の高いコンデンサ内蔵の多層配線板等を提供でき、別途容量素子を多数実装する必要がなくなるので、実装される回路素子の数を減らして電子部品の更なる小型化を図ることが可能となる。さらに、インピーダンス整合の点から、配線幅を小さくすることができ、アンテナ、スタブ等の共振回路ではライン長を短くできるので、小型化が可能となる。本発明の配線板は、半導体パッケージ用の半導体搭載用基板としても、好適に用いることができる。また、配線板の構造は、単層であっても多層であってもよい。【0010】本発明に係る配線板の製造法は、(1)樹脂と、チタン酸バリウム粉体粒子の表面が一級アミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなる充填剤とを含む樹脂組成物からなる第1絶縁層を形成する工程と、(2)前記第1絶縁層に第1配線導体を形成する工程と、を含むものである。また、さらに(3)前記第1配線導体に第2絶縁層を形成する工程と、(4)前記第2絶縁層に第2配線導体を形成する工程と、を含むことにより、多層の配線板を製造することができる。第2絶縁層の形成にも、本発明の樹脂組成物を好ましく用いることができる。【0011】本発明に係る半導体パッケージは、半導体搭載用基板と半導体搭載用基板に搭載された半導体チップとが封止用樹脂により封止されてなり、前記半導体搭載用基板が、本発明の配線板からなるものである。また、別の本発明に係る半導体パッケージは、封止用樹脂が本発明の樹脂組成物からなるものである。【0012】本発明に係る半導体パッケージの製造法は、(1)半導体搭載用基板に半導体チップを搭載する工程と、(2)本発明に係る樹脂組成物により前記半導体搭載用基板と半導体チップとを封止する工程と、を含むものである。また、別の本発明に係る半導体パッケージの製造法は、樹脂ワニスを用いるものであり、(1)半導体搭載用基板に半導体チップを搭載する工程と、(2)本発明に係る樹脂ワニスにより前記半導体搭載用基板と半導体チップとを封止する工程と、(3)ワニス中の溶剤を除去する工程と、を含むものである。