この文章で、トヨタ自動車の例をあげて技術イノベーションより、組織イノベーションが重大な役割を演じることを示している。また、研究開発費の増加している一方で、労働者の分配率が下がり続けることによって、筆者は、技術開発競争より人的資源管理の方が重要だと主張している。この主張についてはさらに考慮が必要だと思われる。日本企業は自社の競争力を向上させるために、アイデア・発想に基づいた基礎研究から製品開発までを自社内で技術競争をのめり込んでいる。しかし、研究開発への巨額の投資に見合わない結果が出てしまった。そのため、筆者の考えると同様に、企業は技術開発競争だけに熱中することがいけないと思われる。その上に、この状況を改善するために、人的資源管理による労働再分配の改善だけでなく、グローバル化による競争構造の変化とともに横串のような斬新な経営戦略を作り出し、専門的な技術人材を育成・活用することなどもう重要である。それによって、新しい価値を創出するために、技術を求める組織と、技術を持つ組織が出会うオープンイノベーションを促進し、企業はより一層生産性・競争力を向上させることが可能である。つまり、イノベーションの発展については、筆者の主張が労働再分配に局限され、一面的になってしまう。