【発明の属する技術分野】本発明は、狭い隙間への含浸性が優れ、充填剤の沈降及びボイドの発生が少ない液状エポキシ樹脂組成物及びこの樹脂組成物を用いた電子部品装置に関する。【0002】【従来の技術】半導体は素子を外部環境から保護して各種信頼性を確保すると同時に基板への実装を容易にするためパッケージが必要である。パッケージには種々の形態があるが、一般的には金属製リードフレームに形成されたタブに素子を固着し、素子表面の電極とインナーリード間を金ワイヤで電気的に接続し、素子、金ワイヤ及びリードフレームの一部をエポキシ樹脂組成物を用い低圧トランスファ成形法で封止したパッケージが広く実用に供されている。このような樹脂封止型半導体装置は、素子サイズに比べてパッケージの外形がかなり大きく、高密度実装の観点からは極めて非効率的である。そのため、パッケージ形態はピン挿入型から表面実装型に移行するとともに小型・薄型化が積極的に行われた。しかし、金属製リードフレームに素子を搭載し、ワイヤボンディングしたものを樹脂封止する構造を採用する以上、実装効率を高めるには限界があった。そこで、COB(Chip onBoard)、ハイブリッドIC、モジュール、カードなどの分野では、一部の素子を高密度実装するためベアチップをバンプを介して基板にフェースダウンで実装するいわゆるフリップチップ実装を採用してきた。最近は素子の高集積化、高機能化、多ピン化、システム化、高速化、低コスト化などに対応するためCSP(Chip Size/Scale Package)と呼ばれる種々の小型パッケージが開発され、パッケージ用基板に素子を搭載する方法として、実装効率のほか電気特性、多ピン化対応に優れるフリップチップ実装の採用が増えている。また、最近の表面実装型パッケージやCSPは、端子がエリアアレイ状に配置されたものが多く、この種のパッケージの実装形態はフリップチップ実装と同じである。【0003】ところで、フリップチップ実装を行う場合、素子と基板あるいはCSPはそれぞれ熱膨張係数が異なるため接合部に熱応力が発生し接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が充分に保護されていないため、水分やイオン性不純物が浸入し易く耐湿信頼性の確保も重要な課題である。その対策として、通常素子と基板の間隙にアンダーフィル材としてエポキシ樹脂組成物を充填して介在させ、接合部の補強及び素子の保護を行っている。樹脂組成物を介在させる方法には種々の方式があるが、一般的には液状のエポキシ樹脂組成物を素子の周辺に滴下し、毛細管現象により素子と基板の隙間にしみ込ませる(含浸)方法が採用されている(特許文献1参照。)。【0004】【特許文献1】特開2002−118127号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】アンダーフィル材として用いるエポキシ樹脂組成物を、毛細管現象を利用して素子と基板の隙間に含浸させる場合、生産性の観点から含浸時間はできるだけ短くする必要がある。この場合の含浸速度(t)は次式(1)によって表される。t=3ηL2/hγ ・・・(1)ここで、η:アンダーフィル材の粘度、L:含浸長さ、h:ギャップ、γ:アンダーフィル材の表面張力である。式(1)から明らかなように、含浸速度を短くするためには樹脂組成物の粘度は低い程有利である。ところが、粘度を低くするとエポキシ樹脂組成物に含まれる充填剤の沈降が問題になる。充填剤の沈降速度(V)は次式(2)で示される。V=g(ρs−ρ)d2/18η ・・・(2)ここで、g:重力加速度(cm/s2)、ρs:充填剤密度(g/cm3)、ρ:樹脂組成物密度(g/cm3)、d:充填剤の直径(cm)、η:樹脂組成物粘度である。式(2)から、樹脂組成物粘度を変えずに充填剤の沈降を抑制するには、充填剤の粒径を細かくする必要があることが分かる。ところが、アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物は、接合部の信頼性を確保するため線膨張係数をバンプ材と同程度にする必要があり、それには充填剤を高充填する必要がある。しかし、充填剤を高充填したり、沈降を抑制するために粒径を細かくしたりするとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し含浸性が低下するという問題がある。そこで、アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物においては、含浸速度を早めるための低粘度化、充填剤の沈降を防止するための充填剤の細粒化、低熱膨張化のための充填剤の高充填といった課題を同時に解決する必要があった。さらに、このようなアンダーフィル用エポキシ樹脂組成物は無加圧状態で素子と基板の隙間に含浸させ加熱硬化するため、素子、基板及びバンプとの界面あるいは組成物内部にボイドが残存(または発生)し、熱ストレスが加わると界面剥離やクラックが発生することがあり、ボイドの低減も重要な課題になっている。最近は、素子の高集積度化、多機能化などによってチップサイズが大型化する一方、多ピン化によってバンプの小径化、狭ピッチ化が行われ、結果的にチップと基板の隙間が狭まる方向にあり、上記課題の解決がますます難しくなっていた。【0006】本発明はかかる状況を鑑みなされたもので、広い面積、狭い隙間への含浸性が優れ、充填剤の沈降及びボイドの発生が少ない液状エポキシ樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた信頼性に優れる半導体装置等の電子部品装置を提供しようとするものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を必須成分とし、必要に応じて硬化促進剤を含有する液状エポキシ樹脂組成物において、回転式粘度計の回転数n1及びn2(n1/n2<0.5)で測定した粘度比η1/η2(以下、チキソトロピック指数という。)を0.8より小さく、換言すると、液状エポキシ樹脂組成物にダイラタンシー(Dilatancy)を付与し、液状エポキシ樹脂組成物が素子と基板の隙間に毛細管現象で含浸する極低剪断速度領域における粘度を低くすることにより、また、好ましくは、無機充填剤の平均粒径を0.3〜5μmの範囲内とすることにより、上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】すなわち、本発明は、(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を必須成分とする無溶剤型液状エポキシ樹脂組成物であってチキソトロピック指数が0.8より小さいことを特徴する液状エポキシ樹脂組成物に関する。また、本発明は、(2)(C)無機充填剤の平均粒径が0.3〜5μmの範囲内にある上記(1)記載の液状エポキシ樹脂組成物に関する。