往年のエンゲルのファンです。特にブラームスの民謡集におけるシュライヤー、マティスとの録音は研ぎ澄まされた音色に乗ってブラームスの暖かい心が伝わってくる名演だった。全集物の避けられない問題点だが、好演あれば気の入らない録音ありで、玉石混交とまでは行かないが「全曲珠玉の好録音」とは言えない。中には素晴らしい演奏が少なくないから“お買い得”であることは間違いない。例えば最後に収録されている「戴冠式」(K537)はレオポルト・ハーガーと呼吸がピッタリ!「戴冠式」は凡庸な録音ばかり、と言うほど演奏には工夫が要る曲だが、唯々諾々とでも言う様な運びで、その実光り輝く名演奏に仕上がっている。この曲だけでもお買い得だ。僕のようなエンゲル、ハーガーのファンには勿論お買い得。但し、音質は数あるリマスターものの中では若干劣るが十分に聴ける。