私たちはこれまでに、細胞内輸送の分子機構など、生命機能の基本メカニズムを解明する構造生物学研究に取り組んできました。たとえばCRM1という運び屋タンパク質が、核膜孔を通して核から細胞質へ、さまざまなタンパク質やRNAを運び出す仕組みを明らかにしました。これまでに取り組んできた細胞生物学と構造生物学の学際的基礎研究の経験に基づき、現在はヒトのさまざまな疾患(がんなど)の分子病態の解明および創薬への展開を目指した以下の3つのプロジェクトに研究が発展しています(今まさに創薬を見据えた基礎研究の一層の推進が必要とされており、これらの研究は「時代の要請」にかなうものでもあります)。1)がんの発症と悪性化の分子機構の研究。発がんシグナル伝達経路の鍵分子の構造解析など、難治がんの治療戦略に新展開をもたらす創薬を指向した構造生物学研究に取り組んでいます。2)免疫系の疾患に関わるシグナル伝達・遺伝子発現制御機構の研究。免疫系疾患の対症療法ではなく、根本的治療を可能にする創薬を指向した構造生物学研究に取り組んでいます。3)神経系の疾患に関わるミトコンドリア動態制御機構の研究。神経変性疾患や神経発達障害の原因因子の作用機序を解明するための構造生物学研究に取り組んでいます。