いつも,「御利用いただきましてありがとうございます。」と言ったり,書いたりしているのだが,「御利用くださいまして」の方が良いのだろうか。どちらが適切なのだろうか。【解説1】「御利用いただく」は謙譲語1,「御利用くださる」は尊敬語である。つまり,r(自分側が相手側や第三者に)御利用いただく」,「(相手側や第三者が)御利用くださる」という基本的な違いがある。しかし,立てるべき対象は,どちらも同じであり,また,恩恵を受けるという認識を表す点も同様であるため,どちらの言い方も適切に敬語が用いられているものである。【解説2】謙譲語1の「御利用いただく」の使い方には,問題があると感じている人たちもいる。その理由としては,「利用する」のは相手側や第三者なのだから,尊敬語である「御利用くださる」を使うべきだということなどが挙げられているようである。しかし,「御利用いただく」は,「私はあなたが利用したことを(私の利益になることだと感じ)有り難く思う」という意味を持った敬語である。「利用する」のは相手側や第三者,「御利用いただく」のは自分側,という点がやや理解されにくい敬語であるが, 自分側の立場から相手側や第三者の行為を表現した敬語であり,敬語の慣用的な用法として特に問題があるわけではない。ただ,このような「いただく」の用法に対しては,その受け止め方に個人差があり,不適切な用法だと感じている人たちもいる。また,「御利用いただきまして…」と「御利用くださいまして…」のどちらが適切か,どちらが丁寧か,という判断や感じ方についても個人差が大きいようであるが,基本的には,どちらもほぼ同じように使える敬語だと言ってよい。