本論文は資源循環型農業システムを軸とした。しかし、現地調査によって農業を介する資源循環型農業システムへの参加農家が少ない。とりわけ,農業で生計を立てている農家層の参加が少ない。このような状況には,農業廃棄物の利用もさることながら,いわば資源循環型農業そのものに経営リスクを感じていることがある。従来,専業的に農業経営を営んできた農家は,大産地の形成と一元集荷一元販売によって,市場における産地ブランドの確立と価格優位性の確立に努めてきた。こうした生産,販売方式のもとでは,減農薬・化学肥料、農業廃棄物を利用する資源循環型農業や,地場への農産物の供給といった視点は育ちにくかったといえる。 これからの課題は,地域全体で資源循環型農業による農産物の生産と地場への供給を行う農家をどう拡大していくかにある。